今までとは違った職業に就きたいと考えている方の場合、新しい仕事に就くために職業訓練を利用して知識や技術などを習得するという選択肢があります。
ですが、自分が希望する職種に合っていない内容の訓練を選択してしまうと、あまり就職に有利にならない可能性もあります。
実はこの職業訓練選びというのは、その後の就職にとっては大変重要ポイントでもあるのです。
そこで、元職業訓練で就職支援やPCの講師をしていた筆者が、職業訓練の選び方についてご紹介していきます。
何を基準に職業訓練を選ぶのか?
職業訓練を受講する場合、以下の基準に沿って選択するようにしましょう。
- どのような業界、職種への転職を希望しているのか
- 自分に何が足りないのか
- その訓練で習得した知識や技術を希望する職種で活かすことが出来るのか
自分が将来何になりたいのか、どのような仕事をしたいのかが訓練選びの基準となります。
順番に詳しく説明していきます。
1.どのような業界、職種への転職を希望しているのか
仕事選びは職業訓練ありきではありません。
訓練の中には、Webデザインやプログラマー養成、3DCAD習得など、魅力的なコースもありついついそのような訓練を受けてみたいと思ってしまいます。
ですが、長い目で見て考えてください。
例えばWebデザイナーという仕事ですが、あなたの住んでいる地域でどれくらいの需要があるのでしょうか?また、Webデザイナーの求人情報でどのような人材が求められているか理解していますか?
とても厳しいことを申し上げますが、実は業界によっては未経験で再就職が出来る年齢の上限というのが決まっています。
また、学歴を重視する傾向にあるメーカーも少なくありません。
例えば、自動車産業。自動車部品などの設計に携わるような仕事をしようと思う場合、大手自動車メーカーに正社員として採用されるには一流大学の工学部卒という学歴が必要となります。
但し、多くの場合アウトソーシング企業などから派遣され、設計業務に携わることが出来ます。
しかしながら、この派遣にも厳しい要件があり、未経験の場合には20代半ばくらいまでと言われているのです。
航空機産業はもっと厳しく、派遣であっても設計業務に携わる場合には大学の工学部か工業系専門学校卒と学歴までも限定しているほどです。
つまり、自動車産業・航空機産業への転職を希望したとしても、工学部を卒業していなければたとえ派遣でもメーカーに入り込むことは難しいのです。
勿論、下請け・孫請けの工場などの場合は、希望する業務に携われることもあります。
規模にこだわらず、地方の中小企業で自動車部品や航空機部品を造る仕事に携わりたいという方の場合には、30代未経験でも工学部卒でなくても、本人のやる気次第で就職は不可能ではありません。
実際、筆者の教え子の中に30代半ばほどの年齢でパソコン未経験という男性が、地方の小さな工場でCADオペレーターとして再就職を果たしたという現実もあるのです。
どちらにしろ、希望する業界の特に求人条件などを知っておかなければ、折角職業訓練で技術や知識を習得してもその時間を無駄にしてしまう可能性すらあるのです。
2.自分に何が足りないのか
例えば、建築業界で働いていた方が今後の転職を考えた時に、大工でもCADを使って設計図を描けなければ仕事がないという現実があります。
また、WordやExcelなどのOffice系ソフトの操作には問題はないが、事務職として就職するのに+αの知識や技術が欲しいという方もいるようです。
このように、自分が希望する職種に就くために何が足りないのかを知っている場合、職業訓練選びは簡単です。
自分の足りない技術を補えるコースを選択すればいいのです。
CADを習得したいと望む大工さんなら、建築CADコースを、事務系職種で差別化を図りたいと希望するなら、経理事務や医療事務といったコースのほか、Webデザインコースを選択するという方法もあります。
自分に足りないものを知るためには、希望する職種でどのようなスキルを求められているのかを知るということが必要となってきます。
つまり、職種研究・業界研究です。
職種研究・業界研究・自己分析は、転職活動の基本中の基本ですね。
3.その訓練の授業内容についていくことが出来るのか
実は、ここが一番重要です。
筆者の経験から申し上げると、基本的なパソコン操作が出来ない方がいきなりWebデザインコースやCAD習得コースを受講しても、マウス操作・キーボード入力が出来ませんので、授業についていくことが出来ません。
特殊なソフトを使う授業の場合、自宅で予習・復習も出来ませんので、訓練時間内と訓練校が設けてくれている自習時間だけで習得しなければなりません。
そういえば、昔変わった訓練生がいました。
「英語が判らないので、パソコン用語も含めてCADソフトのコマンド名などを和訳してほしい」と言われた方です。
あなたなら、キーボードやマウス、ファンクションキーをどのように和訳しますか?
パソコンに関連する用語のほとんどは日本語ではありません。言葉では説明できますが和訳は難しいのです。このような方の場合、残念ですがそのパソコン用語を覚えることから始めなければ授業についていくことは出来ません。
当然、C言語やJAVAなどを習得するプログラミングコースでも同じでしょう。
他にも、CADコースを受講された方の中に面と辺と頂点の区別がつかない方がいました。機械でも土木でも建築でも、面・辺・頂点の区別がつかなければ、残念ながら仕事をするのは難しいでしょう。
折角3か月訓練を受けても基本的な操作すら習得できなければ、時間の無駄というものです。
パソコンソフトを習得するコースの場合、自分のパソコンスキルがどの程度なのかという点も、訓練コース選択の基準となります。
訓練校の中には、試験にパソコンの基礎知識を取り入れていることもあり、そのテストの点数によっては不合格となることもあります。
最初から難しい職業訓練を選択するのではなく、求職者支援訓練の基礎コースから希望してみるというのも1つの方法です。
何を基準に訓練校を選ぶのか?
訓練コースを選んでも、都道府県によっては同じような訓練が同時期にいくつか開催されることもあり、どのコースを選べばいいのか悩んでしまいますよね。
特に多いのはOffice系ソフト習得のコースです。
例えば小さなお子様がいる求職中のママの場合、託児所が完備されている訓練なら安心して通うことが出来ます。
パソコンの操作自体この訓練で習得しようと考えている方の場合、大人数のコースよりも少人数のコースのほうが質問もしやすいですし、インストラクターを独占できる時間も長くなります。
通うことも考えなければいけません。家から遠すぎると毎日通うのも大変です。
訓練校を選ぶ基準は、人によって違いがありますので何を基準に選ぶのかはここでは敢えて細かく指定をしません。
ですが、訓練応募前に必ず各訓練校の下見を行ってください。
通いやすいかどうかだけでなく、教室の広さに対する受講生の人数や、近くにコンビニなどがあるかどうか、自分の基準に合っているかなど、確認を行います。
更に言えば、訓練で使用するテキストがどのようなものなのかを事前に知っておくと良いでしょう。
テキスト代は自己負担です。コースによっては1万円以上のテキスト代を支払うことになるのです。
市販されているテキストなら、その値段でも納得できるでしょう。
ですが、オリジナルテキストを使っている訓練コースの場合、そのテキスト内容が値段に見合っているのかどうかという問題があるのです。
現在では、職業訓練を主催している都道府県や行政法人高齢・障害・求職者支援機構でも、厳しいルールを設けていますので、数枚のプリントをホチキスで綴じただけのテキストを使用する訓練校はさすがになくなりましたが、装丁がしっかりしていても中身スカスカということもあります。
訓練申込前に事前見学や、電話による問い合わせ、事前説明会への出席など、訓練を受講してからこんなはずじゃなかったと後悔しないためにも、しっかりと確認しておきましょう。
正しい職業訓練の選び方まとめ
職業訓練は就職するために必要となる知識・技術を習得するためのものです。
ですが、短い訓練期間中に全てを習得するのは実は大変難しく、多くの方は自宅で予習・復習をしたり、授業の合間の休憩時間も休むことなく技術習得に努めたりと、わずかな時間でも無駄にしません。
実践的な職業訓練の場合は特に習得も難しい内容なのです。ですが、その難しい内容の訓練を、無料で受講できるというメリットはかなり大きいといえます。
自分の希望する職種に合った訓練コースがあるのなら、受講するメリットは必ずあります。ご紹介した職業訓練を選ぶ基準を自分なりに設定し、しっかりと選ぶようにしましょう。
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